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フリーランスエンジニアのリスク全解!課題と対策

フリーランスエンジニアのリスク全解!課題と対策



フリーランスは、自分の裁量で仕事を選び、働く場所や時間を自由に決められる魅力的な働き方です。しかし、その自由度の高さの裏には、会社員という「傘」の外に出るからこその不安定さが伴います。ここでは、フリーランス特有のリスクの全体像を整理し、なぜそれを事前に「地図」として持っておくことが重要なのかを解説します。

  1. フリーランスエンジニアに潜むリスクとは

1.1 正社員との違いから見えるリスク

正社員であれば、毎月の給与はもちろん、社会保険料の半額負担、有給休暇、退職金、傷病手当金といったセーフティネットが用意されています。一方、業務委託契約で働くフリーランスは原則として労働基準法の対象外ですが、指揮監督下での労務提供や時間的・場所的拘束、仕事の諾否の自由がないなど、実態が雇用に近い場合には「労働者性」が認められることがあります。一般的には最低賃金や労働時間、有給休暇、労災保険といった労働者を保護するための規定は適用されませんが、例外的に労働者性が認められると、これらの保護が及ぶ可能性があります。病気や怪我で働けなくなった場合、案件が予期せず終了した場合など、不測の事態が収入に直結するリスクは、正社員よりも格段に大きいと言えるでしょう。

1.2 リスクを理解することのメリット

フリーランスに潜むリスクを事前に知ることは、決して不安を煽るためではありません。むしろ、これから進む道のどこに落とし穴があるかを把握し、回避策や迂回路を準備するための「航海図」を手に入れるようなものです。リスクを具体的に把握することで、適切な対策を講じ、心の準備ができるため、いざという時に慌てず冷静に対応できます。これは、安心してフリーランスとしてのキャリアを長期的に築くための、最も重要な第一歩です。

2. 収入の不安定さ

フリーランスとして働く上で、最も現実的な懸念が「収入の波」です。案件が途切れると収入がゼロになる可能性もあるため、安定したキャッシュフローを築くための戦略が不可欠になります。

2.1 案件獲得の波による収入変動

フリーランスの収入は、案件の有無や単価に直接左右されます。株式会社マイナビが2024年に実施した調査によると、フリーランスとして働く上での不安として「収入に波がある・不安定」が38.8%で最も多く1、実際に直近1年間の最高月収は平均53.5万円、最低月収は平均11.3万円と大きな収入格差があることが明らかになっています1。特に、特定のクライアントや単一の長期案件に依存している場合、その契約が終了した途端に収入が途絶え、精神的にも経済的にも大きな打撃を受ける可能性があります。


出典: 株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」, https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf

2.2 単価交渉の難しさ

自身のスキルや経験に見合った単価を獲得することは、収入を安定させる上で極めて重要です。同調査では、約5人に1人(18.2%)が取引先との金額・納期・仕事内容について「交渉の余地がない」と回答していることからも1、交渉力の有無がフリーランスの働き方に大きく影響していることがうかがえます。特に経験が浅い時期や、交渉に苦手意識がある場合、「仕事がなくなるくらいなら…」と安請け合いしてしまいがちです。


出典: 株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」P16, https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf

2.3 複数案件を組み合わせる戦略

収入の不安定さを軽減する最も効果的な方法は、複数の案件を並行して進める「ポートフォリオ戦略」です。同調査でも、フリーランスとして独立した人のうち約半数(49.9%)が会社員時代より収入が「減った」と回答していることからも3、単一の収入源に依存することのリスクが浮き彫りになっています。例えば、「稼働率60%の長期案件」を軸に、「週1日の技術顧問」や「単発の小規模開発」を組み合わせることで、一つの案件が終了しても収入がゼロになる事態を防げます。


出典: 株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」, P14 https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf

3. 案件獲得に関するリスク

案件を継続的に確保できるかどうかは、フリーランスの生命線です。開発スキルだけでなく、自分を売り込む営業力や人脈がなければ、キャリアはすぐに立ち行かなくなります。

3.1 営業活動の負担

フリーランスは、開発業務と並行して、クライアント探し、ポートフォリオの更新、提案書の作成、商談、契約交渉といった営業活動をすべて自分で行う必要があります。これらのタスクは想像以上に時間と労力を要し、開発に集中したいエンジニアにとっては大きな負担となり得ます。営業活動がうまくいかない時期は、焦りから精神的に追い詰められることもあるでしょう。

3.2 スキルと市場ニーズのミスマッチ

IT業界の技術トレンドは日進月歩です。あなたの得意な技術が、3年後も同じように求められている保証はどこにもありません。例えば、特定のレガシー技術に固執していると、市場のニーズから取り残され、気づいた時には応募できる案件がほとんどない、という事態に陥る可能性があります。常にアンテナを張り、自身のスキルセットを市場の需要に合わせてアップデートし続ける意識が不可欠です。

3.3 エージェント活用によるリスク軽減

営業活動の負担を減らし、案件獲得のリスクを軽減する有力な手段の一つが、フリーランスエージェントの活用です。エージェントは、あなたのスキルやキャリアプランに合った案件を提案してくれるだけでなく、面倒な単価交渉や契約手続きも代行してくれます。これにより、あなたは最も価値を発揮できる開発業務に集中できます。もちろん手数料は発生しますが、営業にかかる時間や労力を考えれば、多くの場合、有力な選択肢と言えるでしょう。

4. 法務・契約に関するリスク

「口約束」や「契約書の軽視」は、フリーランスにとって命取りになりかねません。報酬未払いや予期せぬ責任追及など、深刻なトラブルを避けるためにも、基本的な法的知識は必須のスキルです。

4.1 契約書を読まないことによるトラブル

契約書は、あなたを守るための盾です。業務内容、報酬額と支払条件、納期はもちろんのこと、「成果物の知的財産権の帰属」「検収の基準と期間」、そして2020年の民法改正で導入された「契約不適合責任」の範囲と期間といった項目を十分に確認せずに契約すると、後々不利な条件での追加作業や損害賠償を求められるリスクがあります。契約不適合責任とは、平易に言えば「納品物が契約内容と違っていた場合に、発注者が修正や代金減額を求められるルール」のことです。詳細については、法務省の公式資料などを確認するか、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。


参考: 法務省「民法(債権関係)の改正に関するパンフレット」, https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

4.2 報酬未払いリスク

残念ながら、フリーランスの報酬未払いは決して他人事ではありません。クライアントの経営状況悪化や、成果物に対する認識の齟齬が原因で、約束された報酬が支払われないケースがあります。これを防ぐためには、契約書に支払条件(支払日、遅延損害金など)を明記することに加え、「着手金として一部前払い」「マイルストーンごとの分割払い」といった支払い方法を交渉することも有効なリスクヘッジです。

4.3 弁護士や専門家に相談する選択肢

高額な案件や複雑な契約を結ぶ際には、弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼することを検討しましょう。数万円程度の費用で、将来起こりうる数十万〜数百万円の損失を防げる可能性があります。また、いわゆる「フリーランス新法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)について、マイナビの調査では35%のフリーランスが「契約トラブルの防止」や「働きやすさの向上」に期待していることが分かっています2。詳細な適用範囲や保護内容については、内閣官房の公式ガイドラインや専門家の解説を確認することをおすすめします。トラブルが発生してから慌てるのではなく、事前に専門家を頼るという選択肢や、公的なガイドラインに目を通しておくことが重要です。


出典: 株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」P13, https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf

5. 税務・社会保険に関するリスク

フリーランスは、会社の経理担当者が代行してくれていた税務や社会保険の手続きを、すべて自分で行う個人事業主です。知識不足は、追徴課税や将来の保障不足といった形で、手痛いしっぺ返しを食らう可能性があります。

5.1 確定申告の負担とリスク

フリーランスは毎年、自身で所得を計算し、税金を納める「確定申告」を行う義務があります。日々の売上や経費を帳簿に記録し、青色申告を行い、e-Taxによる申告または電子帳簿保存の要件を満たせば最大65万円、それ以外の場合は最大55万円の特別控除を受けられるなど節税メリットは大きいですが、慣れないうちは大きな負担です。もし申告内容に誤りがあったり、申告を怠ったりすると、本来の税金に加えて「過少申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが課されるリスクがあります。

5.2 社会保険・年金の自己管理

会社員時代は会社が半額を負担してくれた健康保険や厚生年金も、フリーランスは「国民健康保険」と「国民年金」に切り替え、全額を自己負担する必要があります。特に国民年金だけでは将来の受給額が心許なく、また、会社員が受けられる失業保険や労災保険の対象外となるため、病気や怪我、失業時の保障が手薄になる点は深刻に受け止めるべきリスクです。

5.3 税理士や会計ソフトの活用

税務の不安を解消し、本業に集中するためには、専門家やツールを積極的に活用しましょう。会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使えば、日々の帳簿付けや確定申告書類の作成が大幅に効率化できます。また、売上が一定規模を超えたり、節税対策を本格的に考えたりするフェーズでは、税理士に顧問を依頼することも有力な選択肢です。専門家への報酬は、安心と時間を買うための必要経費と捉えましょう。

6. スキルの陳腐化リスク

変化の激しいIT業界において、「現状維持は後退」を意味します。フリーランスとして市場価値を維持し、高単価な案件を獲得し続けるためには、継続的な学習と自己投資が生命線となります。

6.1 技術トレンドの変化

数年前に主流だった技術が、今ではレガシー扱いされることは日常茶飯事です。経済産業省『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(2018年)で指摘された「2025年の崖」問題では、既存のレガシーシステムの維持が新技術導入の障壁となっており、企業のDX推進において大きな課題となっています。現在のIT業界では、AI、IoT、5Gなど新たなデジタル技術が次々と導入されており、これらの変化に追従できなければ、あなたのスキルセットは徐々に市場価値を失い、案件の選択肢が狭まっていくでしょう。


出典: 経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月), https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/DX_report.pdf

6.2 学習コストと時間の確保

新しい技術を習得するには、学習時間の確保が不可欠です。フリーランスは業務時間とプライベートの境目が曖昧になりがちですが、意識的に「学習時間」をスケジュールに組み込む必要があります。また、書籍代やオンラインコースの受講料といった費用は、当然ながら全て自己負担となります。この投資を怠ると、数年後には市場から取り残され、単価の下落や案件獲得難に直面することになります。

6.3 最新技術(AI/LLMなど)へのキャッチアップ

特に近年では、生成AIやLLM(大規模言語モデル)が、開発の現場を根底から変えつつあります。コード生成やレビュー、デバッグをAIに補助させるのが当たり前になる時代は目前です。これらの技術を単に使うだけでなく、その仕組みを理解し、効果的な指示(プロンプトエンジニアリング)を与えるスキルは、今後のエンジニアの市場価値を大きく左右するでしょう。変化を脅威と捉えず、自身の能力を拡張する好機と捉えることが重要です。

7. 働き方に関するリスク(孤独・健康面)

自由な働き方の代償として、フリーランスは孤独感や心身の不調に陥りやすい側面があります。最高のパフォーマンスを発揮し続けるためには、意識的なセルフマネジメントが欠かせません。

7.1 孤独感とモチベーション低下

オフィスでの雑談や、同僚とのランチといった何気ないコミュニケーションがないフリーランスは、社会的な孤立を感じやすい環境にあります。技術的な壁にぶつかった時や、プロジェクトの成功を分かち合いたい時に相談相手がいない状況は、モチベーションの低下に直結します。一人で黙々と作業を続ける中で、気づかぬうちに精神的なバランスを崩してしまうケースも少なくありません。

7.2 過労や生活リズムの乱れ

「いつでもどこでも働ける」自由は、「際限なく働いてしまう」危険性と表裏一体です。フリーランスは裁量が大きい分、意識的に働き方を整えないと、長時間労働や不規則な生活に陥るリスクがあります。特に、予期せぬ仕様変更が多い「炎上プロジェクト」への参画や、複数の案件を無理に掛け持ちすることで、長時間労働が常態化しがちです。自己管理を徹底しないと、心身の健康を損ない、結果的にキャリアを継続できなくなるという本末転倒な事態を招きます。

7.3 コミュニティ参加やセルフケアの重要性

孤独感を解消し、健全な働き方を維持するためには、意識的に外部との接点を持つことが極めて重要です。コワーキングスペースを利用したり、技術系の勉強会やオンラインコミュニティに参加したりして、他のエンジニアと交流する機会を作りましょう。また、定期的な運動、十分な睡眠、趣味の時間を確保するなど、自分を労わる「セルフケア」を仕事と同じくらい重要なタスクとして捉え、実践することが長期的な成功の鍵です。

8. フリーランスリスクを軽減する方法

フリーランスに潜むリスクをゼロにはできませんが、事前の準備と日々の工夫によって、その影響をコントロールすることは十分に可能です。ここでは、明日から実践できる具体的な対策をまとめます。

8.1 複数の収入源を持つ

収入の柱を一本に絞るのは危険です。興味深いことに、マイナビの調査では職種によって収入への影響が大きく異なり、ITエンジニア・開発系は会社員時代と比べて約73万円も年収が増加している一方、編集・ライター・印刷系は約95万円減少するという結果が出ています3。メインの業務委託案件に加え、技術ブログの収益化、小規模なWebサイト制作、週末だけのメンター業など、複数の収入源を育てることで、リスクを分散させることが重要です。


出典: 株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」, https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf

8.2 契約・税務の専門家に相談する

法務や税務は、フリーランスが自力で完璧に対応するにはあまりに専門的で、変化の速い領域です。餅は餅屋に任せましょう。契約書のチェックは弁護士に、確定申告や節税対策は税理士に相談する。専門家への報酬は単なるコストではなく、あなたをトラブルから守り、事業に集中するための「保険」であり「投資」です。

8.3 スキルアップと情報収集を継続する

IT業界で長期的に活躍するための重要な要素の一つは、学び続けることです。オンライン学習プラットフォームの活用、技術カンファレンスへの参加、OSS活動への貢献などを通じて、常に自分のスキルを磨き続けましょう。これは、スキルの陳腐化というリスクを回避する「守り」の策であると同時に、より高単価で魅力的な案件を獲得するための「攻め」の戦略でもあります。

9. フリーランスを続けるためのマインドセット

リスクを乗り越え、フリーランスとして成功し続けるためには、スキルや知識だけでなく、しなやかで強靭なマインドセットが不可欠です。最後に、心に留めておきたい3つの考え方を紹介します。

9.1 リスクを恐れすぎず「管理」する姿勢

フリーランスにリスクはつきものです。しかし、それらを過度に恐れて行動をためらう必要はありません。重要なのは、リスクを「恐れる」のではなく、「管理(マネジメント)する」という意識を持つことです。どこにどんなリスクがあるかを把握し、対策を立て、コントロール下に置く。この能動的な姿勢こそが、不確実性を乗り越える力になります。

9.2 自己投資を惜しまない考え方

あなたのスキル、知識、そして健康は、フリーランスとしての事業を支える最も重要な「資本」です。書籍の購入、セミナー参加、健康診断やジムの費用などを、単なる出費ではなく「未来の自分への投資」と捉えましょう。今日の自己投資が、数年後のあなたの単価と選択肢を大きく広げることにつながります。

9.3 長期的なキャリアビジョンを描く

目先の案件をこなすだけでなく、5年後、10年後に自分がどのようなエンジニアになっていたいか、どのような働き方を実現したいかという長期的なキャリアビジョンを描きましょう。「この技術領域のスペシャリストになる」「チームを率いるテックリードになる」「プロダクトを自ら生み出す」といった明確な目標が、日々の学習の指針となり、困難な壁にぶつかった時の強力な原動力となるはずです。

出典 1 https://www.mynavi.jp/news/2024/10/post_45548.html2 https://officenomikata.jp/news/16702/3 https://codezine.jp/news/detail/203774 https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/10/Freelanceishikisyugyozittai2024v3.pdf5 https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2410/22/news098.html6 https://nalevi.mynavi.jp/legal-data/21154/7 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241021_86947/8 https://www.advance-news.co.jp/news/2024/10/post-4637.html9 https://iwaki-recycle.or.jp/blog/2024/10/21/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%83%BB%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB2024%E5%B9%B4%E7%89%88%E3%80%90%E3%83%9E%E3%82%A4/

初回公開日2025.9.30
更新日2025.9.30

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